町おこしプロジェクト ウラ長瀞#3 「上長瀞の勉強屋」


長瀞駅の隣駅「上長瀞駅」から徒歩約3分にある「勉強屋」。民宿、蕎麦屋、BBQなどさまざまな事業を展開しています。
ラフティングやカヌーのアウトドア事業者も頻繁に通う上長瀞の名店です。
私のオススメは「けんちん蕎麦」です。汁までいつも完食です。
三代目店主の堀口優さんは、蕎麦屋と民宿を運営しています。
長瀞町という場所で三代続く名店「勉強屋」。メガネとヒゲ、そして手ぬぐいが特徴の三代目"優さん"にお話しを伺いました。

勉強屋について

Q:勉強屋さんの歴史について教えてください。

「ここは最初お土産屋さんだった」

優さん:初めは小さなお店で、お爺ちゃんが石細工などを売っていたのが始まりです。お土産さんとして始まり、その後に民宿とお蕎麦屋が始まりました。創業時期はすみません、ちゃんと記録してなくてわからないんです。

お婆ちゃんが長瀞で住んでいて牛を飼ったりしてました。お爺ちゃんが婿で入ってきて、石細工を加工して並べて売る露店をしました。それが勉強屋の商売としての始まりです。長瀞町も観光で盛り上がってお土産を買ってくれるお客様が多かった。その流れで宿泊もやったらいいんじゃないかという流れで民宿がはじまったそうです。

勉強屋はお土産屋をやってる時期が長いです。長瀞町は関東地方では学生さんたちの遠足場所として昔から有名だった。大きな観光バスがきて、遠足に来た子供たちがお土産を買う場所としてここに何度も観光バスがきた。自分が子供の頃、今は蕎麦屋となっているお店の中央にお土産がずらっと並んでいました。景気が良い時期は本当にかなり売れていました。キーホルダーや箱物お菓子などです。不景気になったり時代も少しずつ変化してお土産も買わなくなっていきました。

もともとお蕎麦屋さんは長瀞町に多くあって、秩父地方では家で蕎麦を打つ家庭も多かった。「蕎麦の町という町おこしをしよう!」という流れもあり、お爺ちゃんもお蕎麦屋さんを始めました。

おじいちゃんがやってた蕎麦は本当に田舎蕎麦という感じでした。お爺ちゃんは観光などに対してすごく真剣に考えていた一人でした。

観光地長瀞が蕎麦の町としてやっていけばもっと人が来るんじゃないか?そういう想いもあって勉強屋もお蕎麦屋をやり始めたそうです。

お爺ちゃんがいた頃は、家族4世代が勉強屋にいました。長瀞町では珍しくないかもですが、お客様には勉強屋は珍しいと言ってもらえる。お爺ちゃんはアイデアがあっていろんなことをしていた。

一代でこんなけのお店を築いたので凄いです。正直なところお爺ちゃんとの相性は良くなかったんですけど。(笑)

でも本当に今考えるとすごい人だったんだなと感じます。多分成功する人ってそういう人なのかな?自分の思いで突っ走る感じ。失敗しても最後までやり遂げる。成功するまでやり遂げる感じです。お爺ちゃんがワンマン経営者で親父も大変だったと思います。自分も一緒に勉強屋に入って3世代で働いてましたが、自分の意見は聞き耳を持ってもらえずでした。

「勉強屋」の由来。

Q:「勉強屋」ってすごく印象的な名前ですよね。どんな意味があるんでしょうか?

優さん:勉強屋の「勉強」には2つの意味があります。関西の方で「勉強しますよ(サービスしますよ)」と「勤勉という意味の勉強」です。一回聞いたら忘れないし勉強屋ってすごく覚えてもらいやすいです。勉強なのでマスコットキャラクター にも二宮金次郎を使用させてもらっています。



堀口 優さんについて

Q:優さんについて教えてください。僕の印象ですが名前のとおり凄く優しい印象です。この勉強屋を継ぐ事になった経緯などいろいろ教えてください。

優さん:2019年の夏に2代目の親父が勉強屋の向かいでBBQの事業を始めました。そのタイミングで自分が蕎麦屋と民宿を経営するようになりました。今は妻とアルバイトの方達と一緒に店を運営してます。たまに子供達も手伝っています。

私は生まれも育ちも長瀞町です。高校卒業後は調理師の専門学校にいきました。その期間は長瀞町を離れ東京で一人暮らしをしました。卒業してからも都内で料理人の見習いみたいな事をしました。父が腰が悪くなり、こっちに帰ってきてほしいとなり、勉強屋をお手伝いするようになりました。

そうだな、子供の時は店は忙しくて親もお爺ちゃんもお婆ちゃんも遊んでくれなかったかな。兄と姉がいるんですが、よく兄弟で遊んでました。そんな感じの毎日でした。自分も子供の頃からモノを運んだりなど、店のお手伝いをしてました。忙しい家で育ったので、普通のサラリーマン家庭に憧れてました。

でも兄も姉もいるので寂しくはなかったですかね。兄は美容師になりたいと長瀞町を離れました。今も渋谷で美容室を経営しています。兄が出て行ったのでこの勉強屋を継ぐ事になりました。兄弟は仲良いです。好きな事やってる姿をみて羨ましいなという思いはありましたね。本当に良い兄貴でした。



正直なところ長瀞町を出て行きたいという想いもありました。葛藤する時期もありましたね。別の仕事をやってたらどうなってたかな?と考えたりもあります。小さい頃に身体が弱かった事もあって、そういう所でためらった事もあります。本当に長瀞町を出ようと考えた時にやっぱり捨てきれなかったです。ここでやりたい気持ち、勉強屋を残したい気持ちがありました。

お爺ちゃん、親父がやってきた勉強屋を無くしちゃいけないっていう気持ちが強かった。その時に覚悟を決めて継ぐ事にしました。

経営者になってからの覚悟

Q:勉強屋を継ぐ事を決めてからも色んな悩みが出てきたんじゃないですか?2020年は新型コロナウィルスの影響もあり経営は本当に大変だったと思います。

優さん:親父の下で勉強屋をしてた時は「こうしてくれ!」と思って偉そうに意見したりしてました。口で言うのは簡単ですが、実際自分で経営をしたらこんなに大変なんだって感じました。経理関係などは全て親父たちがやっていました。それまでの内容も把握してなくて、自分で管理をはじめたら色々大変な事があったんだと気付かされました。

合宿で来られる方がまた来年も来るとご予約頂いたり、常連様の繋がりで勉強屋はこれまでやってこれました。2020年は新型コロナウィルスで団体様が合宿を組む事ができなくなりました。今後もどのような状況になったら動き出すのか心配です。

経営者として勉強屋を継ぐと覚悟を決めたので施設整備もしないといけなかった。民宿は老朽化していてお風呂やトイレが古かった。2020年2月に1ヶ月かけて色々整備しました。お金も借りて3月からまた頑張ろう!って時に新型コロナウィルスが流行りました。2020年はコロナの影響を受けて本当に厳しかった。蕎麦屋も民宿もお客様は減りました。

でも親父から継いで本当にやるのかどうか?覚悟するまでが一番大変だったかな。他にも選べる道はあったけど、この道で行くのかどうか。その時の方が悩んで大変だったかな。他の道を選ぶと勉強屋が終わってしまうから。

そういったことを考えているあの時の方がいろいろ悩んでました。やるって決めたらやるしかない。こっちでいこうみたいな。

今は自分でやれるようになって、仕事も楽しくなった。それまでは悩んでる時期があって親父とやってた時は伸び悩んでたって感じでした。そんな事もあって別々で仕事をしようとなりました。親父の仕事の大変さを知って色々気づきましたし、でも自分のやりたい事が表現できるようになって仕事が楽しくなった。
  • こだわりと苦悩
Q:仕事が楽しくなったのはどのような事がキッカケだったんですか?

優さん:親父たちと自分がしたい、お蕎麦の出し方やお客様への接客など考え方が違いました。擦り合わせて一緒にやるのは難しかったんです。自分とキャラクターが違うかった。父のキャラクターを知ってる人には「あっ確かにね!」ってわかるんですけど。(笑)

親父はお客様と一緒に酒を呑み交わして仲良くなって何でも言っちゃう人だった。人を巻き込んでいくタイプでした。自分はどちらかと言うと苦手でかしこまっちゃう感じ。お客様との距離感の取り方が違うかったんです。

自分に変わってそういう所で悩んだ事もあった。けど自分のやりたい事をやる、自分のやり方でやるしかないと思ってます。

それが最近できてるかなと自信になっています。お客様との関わり方は親父たちとは違いますが、僕らのやり方を支持していただけるお客様もいて喜びになっています。まだまだいろいろ探ってる最中ですがいろいろチャレンジしていきたいですね。昔は宴会などもやってました。独立する事になって宴会は現在やっていません。今後は復活させたりなど新しい事もできたらと考えています。

  • 先代たちの魅力、自分たちの魅力。
Q:先代たちの魅力も気になります。けど優さんたちも凄く魅力があると感じます。人によって雰囲気が変わっていくのも店の魅力とおもいます。自分のこだわりはどんなところと考えてますか?

優さん:確かにあそこの店行くと面白いって言われてましたね。いまだにお爺ちゃんを目当てに来るお客様がいます。おじいちゃんいますか?って、昔話し込んでファンになったみたいで。親父も親父で民宿に来たお客様と一緒にお酒を飲んだりします。自分の代になってキャラクターが弱いっていうコンプレックスがあったんです。

でも自分は自分のキャラでありたい。よく周りの人たちに真面目すぎるって言われます。けどお客様と真摯に付き合いたいんです。良い距離感で話したり良い雰囲気になってほしいと考えてます。自分のやり方でどうなっても勉強屋をやっていかないといけないですし。

実は妻もかなり商売向けの性格をしてます。なので自分と妻がやってる勉強屋にまた来たいと思ってもらえるようにしたい。ほんとにそればっかりです。この店でやる事を喜んでもらえるようにしたいです。

  • 民宿について
Q:勉強屋の民宿「長瀞荘」について教えてください。

優さん:民宿なんですけど、ホテルや旅館ではできない事をしないといけないと考えています。お客様は求めるものが違うはずなので。

例えばですが団体のお客様が来て、花火とかこんな企画をやりたい時に親身になって一緒にやっちゃう。そういう企画の実現性のところは自由度も高いです。民宿には民宿の良さがあると思うんです。民宿だからできる事をやってる感じです。旅館の質を求めるお客様は違うと思いますが、自分で何かをやったり合宿したりなど企画的な旅をする人には楽しいと思います。



ただ部屋を貸すのではなく、幹事さんによりそったサービスができたりします。より深くお客様と関わったりできる、そこが自分たちの魅力かもしれません。良くも悪くも父親の時代は結構雑だったの(笑)

距離感とるとこはとる、適度な距離感を取れるようにしたい。いろんな提案をしながら。でもまだいろいろ考えてる最中ですね。どういう風に勉強屋とあわせて歩んでいくかというところです。


民宿を運営するは結構大変なんです。いろいろやることがあり手があかないです。お蕎麦は朝から15時ぐらいまで、その後閉めて民宿の夕食作りをします。夕食は18時ぐらい、そして朝食はだいたい7時とか。なので蕎麦を仕込んだりもあるので、泊まり込んだりしてます。今は大丈夫ですけど、歳を取ったらどこまでできるのかっていう心配もあります。基本的に自分がいないといけなかったりするので。

  • 勉強屋としての今後の展望
Q:勉強屋の未来について質問させてください。今後どのような事をしていくなど目標はありますか?

優さん:今が必死でこれからの事については見えていないですね。けどずっと考えているのは「長瀞町にきたお客様が笑顔になってもらう事」です。楽しい思い出を作って帰ってもらえるようにしたいという気持ちが大きいです。今後の展望はしっかりと考えないといけないですけど。(笑)

自分がやる事、お蕎麦にしても、民宿にしても。例えば「美味しい」と言ってもらえるのも大事だけど、ここの空間を使って最終的に笑顔になって帰って欲しいです。その為ならなんでもやっちゃう。なんとかお客様を笑顔にして見送りたい。そう思ってます。何も先は見えてないですが、見えてないのも可能性かもしれませんね。(笑)

先代もそれを大事にしていた。そこはしっかり受け継いでいきたい。本当に楽しそうに仕事してたんですよ、お爺ちゃんにしても親父にしても。お金じゃなくて来てくれたお客様と話をするのが好きで、一緒にお酒飲んだり。商売というか人と触れ合うのが好きみたいな感じ。

お土産屋が民宿やったりお蕎麦をやったり、
今後どうなっていくのかわからないですけど。

ちなみに息子がいるんですけど蕎麦アレルギーなんです、まさかの(笑)、蕎麦屋の息子なのに(笑)。

周りからお気の毒にみたいに言われる事もありますが、全然いいんです。そんなに継いで欲しいなどは何も考えてないです。やりたい事をやったら良いと思ってます。好きで楽しめる仕事してもらえたら親としてはそれでいいです。

  • 長瀞町について
Q:最後に長瀞町の魅力について。どんな町ですか?
優さん:長瀞町の魅力は自然豊かなところです。あと他の町の事はわからないですが人が優しいところ。観光に来た人になんか良いなって思われる人がいるんだなって感じてます。ここにいる事が当たり前なので他の地域と比較して考えたりできないですが。一人一人のキャラクターが濃くていいなと感じています。

話は変わりますが、ラフティングを去年初めてしました。それまで体験した事なくて。やったらすごく楽しかった。しかもガイドさんが違うと同じコースでも楽しみの感じ方が違うんです。だからやっぱり面白い人が多いんだなと。体験してからは、お客様にラフティングをお勧めする言葉も全然変わった。本当にこれが楽しいからやってみてと伝える事ができるようになりました。

  • 長瀞町に勉強屋がある意味
Q:この町でずっと商売されています。勉強屋が長瀞町で愛され続けている理由はあったりしますか?

優さん:この町で商売をさせてもらって長瀞町にとって勉強屋の存在価値は何なのか。どうやったら貢献していけるんだろう。って考えてます。観光のお客様への価値はお蕎麦を食べる事だったり、泊まれるってところだったりするんですけど。長瀞町に住む人にとっての価値を作れたら。長瀞町にある意味を明確に見出せたらと思いますね。探り探りですからね、妻ともいろいろ話しながらね。


3代目の優さんにお話を聞かせて頂きました。取材が12月のクリスマス前だったので店先の二宮さんはサンタの帽子をかぶっています。四季や行事によって変化する二宮さんも注目です。話を聞いていると、長瀞町への想いや勉強屋に対する優さんの覚悟を感じました。本当に優しく家族想いな素敵な方です。家族で迎えてくれる温かさ、懐かしい感じ。夕方になると優さんの子供たちがお店に帰ってきます。勉強屋のような店たちが長瀞町を形成していて、優さんのような人たちが長瀞町の魅力になっていく。ウラ長瀞では人を軸にした長瀞町の魅力を共有していきます。

勉強屋
〒369-1305 埼玉県秩父郡長瀞町長瀞1504
電話:0494-66-0336
Instagram: 

長瀞町 | 町おこしプロジェクト 観光だけではみえない魅力を掘り下げていきます。#ウラ長瀞

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