町おこしプロジェクト ウラ長瀞 「研究所を継ぐ者」


昔の長瀞町は農業や蚕の養殖が盛んで何かをつくるクリエイターが多く住む土地でした。長瀞町の魅力の一つは「雑音」がないところ。 クリエイターは無駄な雑音に惑わされることなく好きなことに没頭できます。 長瀞町には今もモノづくりに没頭するクリエイターが生き続けています。 今回のウラ長瀞は荒川沿いにある「井上ハーブ研究所」で、 ハーブウォーターと精油の抽出に没頭するクリエイターをご紹介いたします。 



" 井上ハーブ研究所 "


長瀞の荒川沿いに隠れるように建つ「井上ハーブ研究所」。抗菌アロマテラピー研究の第一人者、 故 井上重治博士が残した研究所です。 農園でハーブを育て、ハーブの研究に没頭した場所です。 古民家の研究所には今も井上重治博士の研究資料や思い出が残されています。 

この研究所では今もゆっくり時間をかけて上質なハーブウォーターと精油が抽出されています。 井上重治博士が亡くなれてから、この研究所を守り続けているのが長瀞人の飯島さんです。 

飯島さんは現在、株式会社秩父ハーブ研究開発の取締役となりました。そしてこの会社も、故 井上重治博士から引き継いでいます。 



飯島さんについて


2011年の10月に飯島さんは長瀞町シルバー人材センターから派遣され研究所にきました。 井上ハーブ研究所に派遣される前は、一般企業に勤めていましたが一度お仕事を無くされた経験もありました。

飯島さん:三姉妹の長女が高校生の時で、お金も必要な時期で本当に大変だった。 知り合いの製造関係の仕事をして辛い時期を乗り越えました。 

その辛い時期を乗り越え、区長を長い期間務めるなど町の住民からの信用も厚い方です。 
飯島さんの仕事はすごく繊細でまさに職人です。大きなノートには細かく日々の業務日報がまとめられています。 クロモジの水蒸気蒸留する過程を見学させていただきました。

研究所内はクロモジの香りが漂う素敵な空間です。 井上ハーブ研究所に集まるクロモジは秩父地方で採取されたものです。 クロモジの水蒸気蒸留は本当に繊細な作業で毎回抽出できる量も違います。 ノートには分量や違いなど細かくメモを取って記録を残しています。 


飯島さん: 「誰でもできるよ」

っと飯島さんは言いますが、決して誰もができる仕事ではないです。 飯島さんにしかわからない感覚の微調整があって、上質なハーブウォーターと精油を抽出することができています。 現在は人の手作業でハーブを蒸留しているところはほとんどありません。 時間をかけて丁寧な仕事をする。飯島さんが大切にしていることが商品の魅力につながっています。


研究所の外で待つハーブ猫 


特別な仕事をしているのに腰が低く謙虚な飯島さん。そんな飯島さんの人柄に魅力されるのは人間だけではないようです。 三年前の秋にハーブ農園に現れたこちらの猫ちゃん。 

飯島さん:カップラーメンのカレー味のつゆをあげたらずっとついてくるようになった。

いつも飯島さんの作業を遠くから見つめています。寂しくなったら「にゃー」と呼ぶようになりました。 この猫ちゃんが現れた日の飯島さんがつける業務日報ノートには「ハーブ猫、現れる」と記載されていました。 取材したこの日も、裏口の外でお尻をむけて飯島さんの仕事を見守っていました。 

生粋の長瀞人

飯島さんは生まれてからずっと長瀞で生きる長瀞人です。 観光客や移住者にとって長瀞は特別な空気感がある町ですが、 それが当たり前で育った飯島さんは長瀞町についてどう感じているのでしょうか? 

飯島さん:わかんないけど、いいところだよ。

すごくシンプルな回答ですが、長瀞の魅力を表す言葉はこれしかないと私も感じてます。 「シンプルに、いいところ」。 観光地とは違う長瀞の姿を見て感じて頂くと、必ずこの言葉にたどりつくと思います。 

飯島さん:昔の荒川はもっと清流で鮎がいて河鹿がいたけど今は変わってしまったよね。人口も今より多かったけど家の数が多かったわけじゃない。 一つの家族が大きかった。二世帯、三世帯が住むのが当たり前だったからね。

少しずつ変わっていく長瀞を見て色々感じているという印象をうけました。 長瀞町では人口減少が課題とされています。 

人だけでなく自然も変わっている(減っている)ことを忘れてはいけないです。 当時は長瀞の人口は一万人を超えていました。今と比べると建物は増えていますが人口は減っています。 

趣味のトライアスロン


 飯島さんの趣味はトライアスロンです。しかも娘さんと一緒に51歳から始めました。 

飯島さん:高校の時に話を聞いてずっと面白そうと思っていた。

実は国内のメジャー大会で年代別で優勝するなどの実力者です。 数年前までは佐渡や宮古島までいき毎年レースに参加していました。 レベルは本物のプロレベル、20代女性と同じくらいのタイムレコードを出しています。 大会全体の順位も上位で、繊細な作業をする職人とは思えないワイルドな一面を持つ方でもあります。 

こちらのクリエイターは多くを語りません。 飯島さんの魅力は恥ずかしながら見せる笑顔です。 笑顔からは植物や動物に対する純粋な人としての優しさが伝わってきます。 井上ハーブ研究所での仕事はシルバー人材センターからの紹介がきっかけです。 年齢は関係なく生きていれば、没頭できる面白い仕事に出会える可能性がある。 些細なきっかけで誰もがクリエイターになれること。 どんなけ辛いことがあっても、歳をとっても、自分が熱中できる何かを持てる事は 最高の幸せであると飯島さんから教わりました。 

■井上ハーブ研究所でつくられるクロモジハーブウォーターについて 

https://www.nicoshop.jp 

■ちちぶハーブウォーター(株式会社秩父ハーブ研究開発) 

https://www.chichibu-omotenashi.com/lc/34/ 

長瀞町 | 町おこしプロジェクト 観光だけではみえない魅力を掘り下げていきます。#ウラ長瀞

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