町おこしプロジェクト ウラ長瀞 「挑戦し続ける長瀞果樹園」


長瀞駅の隣、野上駅から少し離れた場所にある長瀞果樹園。秩父の葡萄ブランド「ちちぶ山ルビー」などを栽培する。この果樹園をお爺さんから受け継いだ高田親子。長瀞果樹園オープン50周年を迎える2021年、大きく変化する社会の中で親子で新しいことに挑戦する。親父のこだわり、息子の若い感性、親子が目指すのはお客様に美味しい果実を食べていただくこと。高田親子を取材しました。


“長瀞果樹園の歴史、創業は1971年、お爺さんが創業。”

Q:創業当時はどんな感じでスタートしたんでしょうか?
親父:創業は1971年、私の父が創業しました。その当時は長瀞町の観光事業が発展してなかったんです。観光事業の目玉として葡萄園をつくらないかと町の支援もあり始まりました。当時葡萄園は15件ぐらいあったのかな。父が町会議員をやっていた。観光事業として土地もあったので始めました。当時の町長からも何か良い案がないか?という事ではじまったそうです。父は他にもノガミ電子という会社をはじめてました。それから私が引き継ぎました。長瀞果樹園は父が名前つけたんですが、果樹園なのになぜ葡萄しかやらないのか?って思ったんです。最近は葡萄以外も作っています。実家でスモモや梨などいろんなもの作ってたんです。父は仕掛け人で色んなことにチャレンジしてました。その時は販路がなくてそのまま終わっちゃった。でもハウスとかいろいろ挑戦してたら今いろんな事をできてたなと。すごいアイデアマンでした。

Q:お爺さんと一緒に2つも事業をされていたんですか?

親父:そうですね、ノガミ電子という会社です。この会社も今年50周年になります。もともとは高砂橋の近くで場所を借りてやってました。なのでサラリーマンをしながら長瀞果樹園をやっていました。ノガミ電子は父の後を継いだんですが、体調も悪くなって他の方に継ぎました。そして長瀞果樹園を軸に今はやらないと回らない。長瀞果樹園に軸を置いて今やっています。


“お客様を飽きさせたくない。
次はこれがある、その次もこれがある、いろんな新種を発表できる長瀞果樹園になりたい。”

Q:どんなこだわりを持って長瀞果樹園を展開しているのでしょうか?


息子:僕は品質や味にこだわってやっていきたい。とにかく作って売ってお金にするんじゃなくて、口コミで、あそこ美味しいよとか、そういう感じにしていきたい。

親父:こだわりね、、。ある程度いろんなモノを作ってきて長瀞果樹園も世間に認められてきた。こんなけ賞も取りました。サラリーマンやりながらの自分でもいろんな賞を取れるんだと自信がついた。今までやってきたことは間違いなかった。けど地質的に足りないものもあるし、そう言ったところは息子に手伝ってもらって情報収集してより良いものを作っていきたい。あとお客様を飽きさせたくない。次はこれがある、その次もこれがある、いろんな新種を発表できる長瀞果樹園になりたい。毎回ハガキでお客様にごく少量のモノをやってますと紹介するんです。やっぱり反応良いです。このハガキを待ってくれてるお客様もいるんです。



息子:これも親父が手書きで書いてるんです。新作紹介じゃないですけど、SNSとかネットが主流の中でハガキをもらえるのも面白いのかなと。

親父:自分なりに努力してきたおかげでお客様も増えてきた。本当に最近ですけど、ある程度自信がついたのでね。

“ここまでの苦労とかよりこれからですよね。”

Q:今年50周年を迎えます。これまで辛いことなど色々あったと思います。

親父:もう全て先行投資ですよね。やっぱりお金の面では厳しかったかな。

息子:僕は本当に良いタイミングで始めれている。ある程度土台がしっかりしてるから苦労はまだないです。好きなことをやらせてもらってる感じです。世間的にも高単価の品種が認知されているなかで、色々と仕掛けれるから本当に良いタイミングで関わらせてもらってます。

親父:ここまでの苦労とかよりこれからですよね。喜んでくれたお客様の期待にこたえないといけない。息子と2人で盛り上げていかないといけない。じゃないとお客様を裏切っちゃう。一房、4000円ですよ?手紙を出すんですけど、私一番乗りです!最初に売ってください!みたいに言ってくれる。そんなお客様もいます。

“ここから10年が長瀞果樹園は面白いんじゃないですかね”


Q:私はまだ長瀞果樹園の果物を食べたことはありません。お客様からの評判も凄く高いと聞きます。収穫が凄く楽しみですなのですが、同じ葡萄でもなぜ長瀞果樹園が支持されているのか?



親父:私は味だと思いますね。かなり愛情をもって拘ってるので。長瀞果樹園の葡萄を食べると、作る人によってこんなに味が違うんだねと驚かれたりもする。そういう評価も頂いたりしてます。

息子:お客様は正直だからね。

親父:私はとにかく美味しいものを提供したい。話題性のあるものどんどん取り入れてお客様に提供していく。これをやめちゃうと長瀞果樹園にはあれはないの?って言われたら、あーって思っちゃう。世の中の2番目でもいいから新しい果実を追っかけています。長瀞果樹園に合わないものをやめますけど、良いものは残していく。そういうやり方で種類を広げています。

息子:葡萄の種類って何百種もあるんです。例えば葡萄を40種類やってる園があります。けど結局手が回らないんですよね、いろんな品種をやってると。各品種にあった仕立て方がある。うちも色々やっていますが、品種は絞っていって、世の中やお客様が求めるものを作ってます。長瀞果樹園は狭く土地の広さもありますが、できる中でやっています。

親父:長瀞果樹園は面積的にはあるんですけど、栽培してる場所は狭いですね。ちちぶ山ルビーでいうと、長瀞果樹園の4倍の量ぐらいを作ってる葡萄農家さんもある。各園に適正規模があります。特に今私たちは平日の仕事もあるので土日メインのできる規模でやってます。今は段々と変わっていってる。ここから10年が長瀞果樹園は面白いんじゃないですかね。息子と2人でやるので。お互いに一緒にね。その後は息子に任せたい。新しい生産技術など会得してもらって、秩父の中でも本当に良い園になるんじゃないかな。

息子:他の園のものを全ては食べたことないけど、お客様の反応や講習で試食してもうちの味は間違いないなって思うところはあります。

“葡萄の木も適当ではなくバランスよく栄養を入れてあげないといけない。”


Q:同じちちぶ山ルビーでも評価は変わるんですね。その違いってなんなんですか?


息子:同じ品種の果実でも各園でやはり味が違うんです。枝の仕立て方、肥料とかもあるんですが結局土が違うのかなって思います。収穫が終わったら選定作業といって枝をきるんです。この段階で来年取れる数は決まります。どこの園も同じような作業はやってるのに何が違うのか?って考えると、栄養剤や肥料とやっぱり土が違うのかなと。毎年JAに土壌診断をだしてます。ここの畑はこれが足りないから、この肥料を入れた方が良いとか答えてもらえます。そういったのもしっかり考え参考にしています。

親父:土の中には窒素、リン酸、カリ、石灰とあるんですけど、上手くバランスが取れていないと根から吸収してくれない。木は上手く吸えないんです。料理でも素材が悪くても、味付けが美味かったらよいと思うんです。ちょうどバランス良く混ざってるから美味しくなる。葡萄の木も適当ではなくバランスよく栄養を入れてあげないといけない。それがたまたま上手くいってるのかな。お爺さんも色々試行錯誤していた。こんな事言ったらあれだけど、籾殻まいたら美しくなるのかなと思います。他の家はまいてない所が多いかな。

Q:その情報は記事に出して大丈夫ですか?笑

親父:全然大丈夫ですよ。隠しても意味がないから。真似してくれて同じ味が出れば、ブランドに人がついてくれる。うちだけでは何千房しか用意できない。他の園でも美味しい葡萄ができたらそれでいい。長瀞や秩父いったら美味しいものがあるみたいな印象になってほしい。

息子:うちは基本的に情報はオープンです。本当にその方法が正解かわかんないですけど、どうしてるの?と技術的なところは同業者様に話します。ちちぶ山ルビーはオリジナルブランドなのに、あそこいったら味が違うみたいなことがある。オリジナルブランドとして出してるんだから全体の味の水準を上げたいです。せっかくオリジナルブランドをめがかけて遠方からきたり贈り物して、美味しくなかったらブランドの価値が下がってしまう。


親父:こんな感じでいつも長瀞果樹園の2人が生意気なことをいってるんです(笑)でも拘ってるんですよね。新しいものを勉強というか、私たちは基本的に知識はわかってないから。農業大学を出てるわけでもない、しっかり勉強して良いところを取り入れる。長瀞果樹園ではこの方法は違う、でもこの方法は良いから取り入れるみたいな感じです。

息子:さっきの肥料の話もですけど、うちはこれで上手くいったけど違う地域や土地にいったら合わないかもしれない。これが良いとは言えないけど、こういう土地でこうやったら良い結果が出たよと伝えられる。

親父:まだまだ長瀞果樹園は誰かに教えるような者ではない。けど結果的に長瀞果樹園で試した事がうまくいってる。

息子:長瀞果樹園はまだまだ冒険できないです。けど色々試してる人たちの話を聞いてこの技術は間違いないから取り入れよう。そんな感じですね。農業も色々ありますが、とくに葡萄はそうじゃないかな。木の仕立て方もいろんな種類があるし。

親父:葡萄は面白いです。相手(木)が口を聞かないから。よく言うんですけど、なんでそんなに葡萄が好きなの?って。丹精込めて育てるのが楽しい。

息子:葡萄はシーズンに一回しか収穫できないんです。しかも一回の収穫だけを考えるではなく、何年も何年も先を見据えて仕立てていかないといけない。今年はこれだけ取れた、来年も同じぐらい取りたいなど先のことを見据えて育てないといけない。



親父:一年置きの栽培で自然系は全てそうですね。今年は柿がいっぱいなってすごいねーってあるけど、翌年はダメだったりする。木がわかってるんです、去年いっぱい作ったから今年は休もうみたいな。それじゃ農家はやっていけない。毎年余計につくったらだめ、8割ぐらいの気持ちで作らないといけない。100%やるのはダメなんです。腹八分目なんです。欲をかいたらダメなんです。

息子:木が若いうちは枝に力を入れなさいと言うんですけど、そこで欲張って実をつけてお金にしようとすると将来的にその木はどうなるか?なども考えないといけないんです。

親父:本当は今新種が生えてるんですけど、一年は我慢しようかって言ってるんですけどね。私は取りたいと思ってますが(笑)

Q:今後の長瀞果樹園の展望などあれば教えて頂けますか?

息子:先行き10年ぐらいは大丈夫かなと思ってます。けどその先はこの葡萄直売だけで大丈夫なのか?とか、世の中見てると生産から加工までやってる。そういう風に変化していかないと行けないと考えています。でもうちの規模的にどうなのか?とか感じてます。農業は高齢化してる。農家のイメージって昔でいう3Kのイメージですよね。きつい、きたない、稼げない。っていうイメージがあったと思います。長瀞っていう土地柄もあるかもですが、農家が稼げないっていうのは違うと考えています。やり方はあると思うんです。手がまわればその分だけ収益になるし。その時その時でどういった展開にもっていこうか考えようと思ってます。

親父:でも長瀞果樹園をよくここまで持ってきたよなと。ある程度の道筋はできてるからね。とにかく良いものをつくる。時代に合わせてね。いろいろやっていきたいよね。葡萄って面白いんです。いろんな形、いろんな味、いろんな色があるんです。極端ですけど他のものには葡萄みたいな魅力がないと私は感じています。

息子:でもそうですね。例えばうちが葡萄農家じゃなかったら僕はやってるのかな?と思います。葡萄は、赤、緑、黒、形は、丸、ピーマン型、ハート型、楕円型、いろんな形があるんですよね。味ももちろん全て違う。それが凄く面白いんですよね。

親父:この2、3年で長瀞果樹園は凄く変化していくと思う。

息子:僕が今30歳手前。今年が50周年なので長瀞果樹園を100年続けれたらいいかなって考えてます。

親父:あー、羨ましいしそうなれば嬉しいです。一緒にいたいな。いや無理無理(笑)そんなけ生きたら国が困るよ(笑)そこまでじゃなくても長瀞果樹園が80周年ぐらいは目指したいな。健康管理してね。

取材当日は家族揃って葡萄園の作業を手伝っていました。なんだかほっこりしました。家族でつくる美味しい葡萄。収穫は8月中旬頃とまだ先ですがかなり楽しみです。高田親子、いや高田一族がつくる葡萄をお楽しみに。

長瀞果樹園
住所:埼玉県秩父郡長瀞町大字本野上321-5
TEL:0494-66-3276

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